【花主】はなはなたんたん
6/24のCCで無料配布したSSです。
昨年、一昨年に書いたはなたん、はなたんたんの続きになってます。
お誕生日とは程遠い感じですが、楽しんでいただければ幸いです♪
*****
突如堂島家で始まった執事ごっこは、家主である堂島の乱入によって強制的に幕を引かれた。
まあ、キスをねだった段階で、すでに趣旨は変わっていたのだから、問題ないと言えば問題なかったのだが。
「そのあとが問題だったんだ」
翌日、教室に顔を出した孝介は、ひどく疲れた顔をしていた。
「何があったんだよ」
詳しい話は昼休みにと焦らされ、朝から何度も孝介のため息を後ろの席から聞いていた陽介は、まさかあのキスがバレて堂島に何か言われたんじゃないかと気が気ではなかった。
(堂島さん、ばっちり酔っぱらってたはずだけど)
万が一そうだった場合どうやって誤魔化したものかと、それが孝介のため息の原因と分かったわけでもないのに、ユニゾンするようにため息をつきまくってしまい、性も根も尽き果てた気がする。
そんなこんなで、やっとのことで訪れた昼休み。二人は弁当片手に屋上へと場所を移した。
「で? どうしたんだよ。まさか昨日のアレ……」
「菜々子が、執事カフェがやりたいって言いだして」
「あ?! なんだって?! 執事カフェ?!」
思いもよらない変化球に、思わず立ち上がって大声をあげてしまう。
「花村、声が大きい」
「ああ、悪ぃ」
一応辺りに人影はないが、人に聞かれて構わないという話でもない。言われるまま陽介は声を落として身体を寄せた。
「なんだって菜々子ちゃんがそんなこと」
「お前のせいだからな」
「俺?!」
そんなこと言われても心当たりは全くない。
「昨日、執事ごっこしたじゃないか」
「あ? まあな。それがどうしたよ」
本当にごっこ程度のものだったのは孝介だってわかっていたはずだし、あれを始めたのは菜々子が寝てしまった後のことだ。
「今朝テレビで執事カフェの特集やってたんだ」
「はぁ、最近そういうの多いよな。で、菜々子ちゃんが興味持ったと?」
どうやら、菜々子に『執事とは何か』と聞かれ、説明ついでに昨日の陽介との『執事ごっこ』の話をしたらしい。
「そしたら、『菜々子もやるー!』って」
「え、それ俺のせいじゃねぇだろ!」
厳密に言ったら『執事をやる』って言い出したのだって孝介だったはずだ。まあ、陽介がお願い事を決められなかったのが原因ではあるが。
「まあ、そうか」
「いや、ま、いいけど。でもやるったってどうすんだ? 菜々子ちゃんが執事になるってのも違うだろ。『妹カフェ』で『おかえり、お兄ちゃん』とかってんなら――」
「それはだめだ」
陽介の軽口に間髪いれず突っ込みを入れてくる。さすがシスコン孝介。というか、そんな『妹カフェ』があったら通い詰めそうな気がするのはなぜだろう。
「ま、そーだな。で、つまり? 菜々子ちゃんは『お嬢様』がやりたいってことか?」
「そういうことだ」
それならまあ、やってやれないことはないだろう。
「やってやりゃあいいじゃん」
「恥ずかしい」
「昨日は恥ずかしくなかったのかよっ!」
さんざん人をからかっておいて、今更恥ずかしいとはどういう了見だ。
「じゃ、やらないのか?」
「菜々子ががっかりするのは……」
「ないよな、お前の選択肢には」
ということは、当然やる方向で話は進む。
「ジュネスのパーティーグッズに執事ものあったと思うぜ? 帰りに寄ってくか?」
どうせやるならこった方が菜々子も喜ぶし、中途半端にやるより吹っ切れる分恥ずかしくもない……かもしれない。
「そう……だな」
まだイマイチ踏ん切りがつかないのか、どこか遠い目で返事をする孝介が、小さく見えた。
*
「なんでも俺まで?!」
パーティーグッズにちょうどいい執事服紛いがあったのは良いが、孝介は何を思ったかそれを二つ購入していた。
陽介がそれを知ったのは、孝介とともに堂島家へ着いてからのことで。
「おれ一人じゃ恥ずかしいじゃないか」
「道連れかよ?!」
一足先に帰ってきた菜々子をいったん外に追い出して、これから『執事カフェ堂島』開店なのだが。
「菜々子のためだ」
「お前、それでだれもが言うこと聞くと思ってるだろ」
「違うのか?」
本気でそう思ってるに違いないまなざしで見つめられれば、陽介も腹をくくるしかなくなる。
「わかったよ。その代わり『なんでもやる券』の権利復活してもらうかんな」
「じゃあ、もう一回キス、しようか」
「あのなぁ!」
結構緊張したのに、そんな簡単に言われると腹が立つ。が。
「う、でも、まあうん。じゃあ、それで」
と、受け止めてしまうのは惚れた弱みなんだろうなと諦める。
「じゃあ、ま、菜々子ちゃん専用執事カフェオープンと行きますか!」
台所にはケーキやクッキー、ココアに紅茶、フレッシュジュースも取りそろえ。
二人が玄関で居住まいを正すと、程なく開く玄関扉。
「お帰りなさいませお嬢様」
昨年、一昨年に書いたはなたん、はなたんたんの続きになってます。
お誕生日とは程遠い感じですが、楽しんでいただければ幸いです♪
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突如堂島家で始まった執事ごっこは、家主である堂島の乱入によって強制的に幕を引かれた。
まあ、キスをねだった段階で、すでに趣旨は変わっていたのだから、問題ないと言えば問題なかったのだが。
「そのあとが問題だったんだ」
翌日、教室に顔を出した孝介は、ひどく疲れた顔をしていた。
「何があったんだよ」
詳しい話は昼休みにと焦らされ、朝から何度も孝介のため息を後ろの席から聞いていた陽介は、まさかあのキスがバレて堂島に何か言われたんじゃないかと気が気ではなかった。
(堂島さん、ばっちり酔っぱらってたはずだけど)
万が一そうだった場合どうやって誤魔化したものかと、それが孝介のため息の原因と分かったわけでもないのに、ユニゾンするようにため息をつきまくってしまい、性も根も尽き果てた気がする。
そんなこんなで、やっとのことで訪れた昼休み。二人は弁当片手に屋上へと場所を移した。
「で? どうしたんだよ。まさか昨日のアレ……」
「菜々子が、執事カフェがやりたいって言いだして」
「あ?! なんだって?! 執事カフェ?!」
思いもよらない変化球に、思わず立ち上がって大声をあげてしまう。
「花村、声が大きい」
「ああ、悪ぃ」
一応辺りに人影はないが、人に聞かれて構わないという話でもない。言われるまま陽介は声を落として身体を寄せた。
「なんだって菜々子ちゃんがそんなこと」
「お前のせいだからな」
「俺?!」
そんなこと言われても心当たりは全くない。
「昨日、執事ごっこしたじゃないか」
「あ? まあな。それがどうしたよ」
本当にごっこ程度のものだったのは孝介だってわかっていたはずだし、あれを始めたのは菜々子が寝てしまった後のことだ。
「今朝テレビで執事カフェの特集やってたんだ」
「はぁ、最近そういうの多いよな。で、菜々子ちゃんが興味持ったと?」
どうやら、菜々子に『執事とは何か』と聞かれ、説明ついでに昨日の陽介との『執事ごっこ』の話をしたらしい。
「そしたら、『菜々子もやるー!』って」
「え、それ俺のせいじゃねぇだろ!」
厳密に言ったら『執事をやる』って言い出したのだって孝介だったはずだ。まあ、陽介がお願い事を決められなかったのが原因ではあるが。
「まあ、そうか」
「いや、ま、いいけど。でもやるったってどうすんだ? 菜々子ちゃんが執事になるってのも違うだろ。『妹カフェ』で『おかえり、お兄ちゃん』とかってんなら――」
「それはだめだ」
陽介の軽口に間髪いれず突っ込みを入れてくる。さすがシスコン孝介。というか、そんな『妹カフェ』があったら通い詰めそうな気がするのはなぜだろう。
「ま、そーだな。で、つまり? 菜々子ちゃんは『お嬢様』がやりたいってことか?」
「そういうことだ」
それならまあ、やってやれないことはないだろう。
「やってやりゃあいいじゃん」
「恥ずかしい」
「昨日は恥ずかしくなかったのかよっ!」
さんざん人をからかっておいて、今更恥ずかしいとはどういう了見だ。
「じゃ、やらないのか?」
「菜々子ががっかりするのは……」
「ないよな、お前の選択肢には」
ということは、当然やる方向で話は進む。
「ジュネスのパーティーグッズに執事ものあったと思うぜ? 帰りに寄ってくか?」
どうせやるならこった方が菜々子も喜ぶし、中途半端にやるより吹っ切れる分恥ずかしくもない……かもしれない。
「そう……だな」
まだイマイチ踏ん切りがつかないのか、どこか遠い目で返事をする孝介が、小さく見えた。
*
「なんでも俺まで?!」
パーティーグッズにちょうどいい執事服紛いがあったのは良いが、孝介は何を思ったかそれを二つ購入していた。
陽介がそれを知ったのは、孝介とともに堂島家へ着いてからのことで。
「おれ一人じゃ恥ずかしいじゃないか」
「道連れかよ?!」
一足先に帰ってきた菜々子をいったん外に追い出して、これから『執事カフェ堂島』開店なのだが。
「菜々子のためだ」
「お前、それでだれもが言うこと聞くと思ってるだろ」
「違うのか?」
本気でそう思ってるに違いないまなざしで見つめられれば、陽介も腹をくくるしかなくなる。
「わかったよ。その代わり『なんでもやる券』の権利復活してもらうかんな」
「じゃあ、もう一回キス、しようか」
「あのなぁ!」
結構緊張したのに、そんな簡単に言われると腹が立つ。が。
「う、でも、まあうん。じゃあ、それで」
と、受け止めてしまうのは惚れた弱みなんだろうなと諦める。
「じゃあ、ま、菜々子ちゃん専用執事カフェオープンと行きますか!」
台所にはケーキやクッキー、ココアに紅茶、フレッシュジュースも取りそろえ。
二人が玄関で居住まいを正すと、程なく開く玄関扉。
「お帰りなさいませお嬢様」