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「なぁ、月森ぃ。俺とお前って何?」 ほぼ押しかけたに近い月森の部屋。テーブルの上には近々開催される期末テストと言う名の地獄に対峙するにあたり、せめてのも悪あがきをしている花村のノートと教科書、更には綺麗に整理された非常に見やすい月森のノートが置かれていた。良く見ると月森のノートには所々丸印がつけてある。『ここ、間違いなく出るからとりあえず丸暗記』と、はって貰ったヤマだ。 「は? 今それ関係ないだろ」 「や、一応な、一応。確認しとこっかなーとか」 「今確認するべきなのは、お前の頭の中だろう」 黒いソファを肘掛にして雑誌を読んでいた月森の目だけが、じろりとこっちを向く。その視線の厳しさに、自然と花村の背筋に冷たいものが流れた。 「あー……まぁ、それはそうなんだけどさぁ」 頬を指で掻きながら、その視線から目を反らす。が、いたたまれなさはどうにもぬぐえない。けど、そろそろ色々確認しておかないと、花村的に非常に困るのだ。 「こう、すっきりしないと勉強も手につかないっつーか」 「そんなの今更だろ」 「いやっ! 孝介くんってばひどいわっ!」 「や、気持ち悪いから」 ばっさりと切り捨てられ、花村は思いっきり机に突っ伏した。 「花村」 「……だって、お前ぜんぜん変わんねぇんだもん」 小西早紀に抱いていたものと月森に抱いている物が同じかなんてわからない。けれど、どうしても黙っていられなかった。 「俺、お前のこと好きなんだぜ?」 「わかってる」 「わかってねぇじゃん」 告白した時と同じやり取り。けれど、良く考えてみたら受け止めて貰っただけで、答えを貰ったわけじゃない。 「俺は月森と恋人になりてぇの。相棒だけじゃ我慢でーきーねーえーのー」 突っ伏したまま手のひらでテーブルの端を握りこみ、ガタガタと前後に揺らす。 「おい、下に響くだろ」 「いーじゃん、どうせ誰もいねぇんだし」 ぐずぐずといじけてテーブルと一体化する勢いの花村の頭上で、月森が盛大なため息をついた。 その音に一度は引いた冷たい汗が再び戻ってくる。今度こそ本当に呆れられたかもと青くなる。 そもそも別に答えなんて求めなかった。ただ、知ってて欲しかっただけなはずだった。けれど、告白した後も変わらず自分と接してくれている月森を見ているうちに欲が出てくるのは自然なことだろう。 だからと言って相手のことを考えずわがまま言って、その結果ここで思いっきり振られてしまったら。側にいることもできなくなってしまったら―……。 とたん怖い考えになり、花村は慌てて身体を起こした。 「なーんってなぁっ?!」 「っぅ!!!」 次の瞬間、花村の頭と月森の顎がクリーンヒットした。 「ッテー……って、あ! 悪ぃ!」 花村は頭だからまだ良いが、月森はそうはいかない。めったに見れないほど顔を歪め、その目尻にはそれこそほとんど見た事のない涙が浮かんでいる。左手は痛みをこらえるようにソファの上で拳を握り締め、右手は打たれた顎をがっしり抑え、目は思い切り花村を睨み付けていた。 「ホントごめんなさい! すみません! まさかそんなとこに顔があると、は……思わ……? ってなんでそこに顔があるんですか」 己の後頭部と月森の顎がぶつかる理由。もしかしてと思いあたったのはあまりに自分に嬉しいシチュエーション。 「え? ええ?! マジ? ねぇマジで?! うっわ、月森が俺にキ、ぶはぁ!」 皆まで言う間も与えられずに握っていた拳が花村の顔面を直撃した。 「死ね」 「つ……月森さん?」 「うるさい、十回死ね」 「……酷っ!!」 「もう二度としない」 「ええええええぇぇぇぇぇっ!!!」 そうして、花村は千載一遇のチャンスをものの見事に粉砕した。 「マジかーっ!!!」 |
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