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 【花主】視線が痛い、無言が怖い。

* 無表情なあなたへの気苦労七題 * お題配布元 >> jachin様


原稿やってちょっと見えた気がする主人公。
そんな訳で今回は主人公視点でお届けします。
なんとなく花村の方がSな感じ? これでやっと大手を振って花主と言い張れるかも!?

そして、えらいところで切れてますが、続きは『本音を言ってになるはずです。たぶん。
(5/15続きUPしました。R18ですので閲覧注意)


や、すみません、色々;;



*****


最近陽介の様子がおかしい。
極力普段通りにしていようと言う努力をしてはいるようなので、特捜の他のメンバーは感づいてはいないが、如何せん一番側で見ている孝介にはそれは無意味だ。
それにどうやら孝介相手では気が抜けるらしく、二人っきりになると場の雰囲気が一変した。
今日だって、TVの中から帰ってきて二人帰路についたとたん、気が抜けたようにボーっとしている。

「花村、なんかあった?」

皆といる時は超ハイテンション、自分といる時は超ローテンション。これが意味することはひとつだ。しかも意識的にしろ無意識的にしろ、こうして孝介自身にわかるよう態度に現していることからも、自分に何かして欲しいことがあるのは火をみるより明らか。

「あ? 別になんもねーよ? つかなんもねえんだよな……」

実のところ、この陽介の態度が孝介には非常に鬱陶しい。なので、最初こそ心配したのだが、途中からあからさまなその態度に馬鹿らしくなって、聞く気も失せかけていた。けれど良く考えてみたら事態に解決が見られないといつまでもこのままという事で。さすがにそれは余りにもウザイ。
TVの中のコニシ酒店で見た陽介の影を知る限り、陽介は内に溜め込むタイプだし、積もり積もると突拍子もない行動に出そうだから、放置して後で取り返しが付かない事態になるのも面倒だ。

「いい加減にしろよ。おれに何か言いたい事があるんだろう?」

それらを総合的に考えると、いまのうちに陽介に吐き出させてしまった方が楽なのは間違いない。そう思ってイライラを押し留め水を向けてみる。
孝介の言葉の真意を伺うようにじっと見つめ返してくる陽介の瞳に燻ったような炎がみて取れて、孝介は僅かに後ずさった。

「お前、なんともねぇの?」
「何が」

そんな孝介の様子に気づかず、陽介は感情の薄い表情で問いかけてきた。端正な作りな分、こう言う時には妙に威圧感がある。みつめられるうち先ほど知らず感じた恐れのようなものが、はっきりと形になって孝介の中に現れた。

「俺とこうしててなんともねぇのかって聞いてんの」

気づけば陽介はその身体が密着するほど孝介に近づいている。そして、孝介はその迫力に押されてブロック塀に追い込まれた。いくら田舎で人通りが少ないとはいえ、往来でこんなことをしていれば、それこそ田舎特有の噂が蔓延しそうだ。

「花村、近い。離れろって」

とりあえず、塞がれていない両脇に逃げ道を見つけ、陽介の正面から身体を抜こうと試みる。が、それも誘いこまれただけに過ぎない。

「逃がすかっての」

孝介と違って鞄でふさがっていない両腕で左右の退路を絶つと、既に近かった距離を更に詰めてくる。同時に怖さとそれとは違う何かが煽られる。
それに孝介が耐え切れなくなる前に、触れるほど近づいた唇がゆっくりと動いた。

「いい加減限界なんだよ」

近すぎて焦点の合わない陽介の目が欲望に支配されているのがわかる。それきり何も言わず、孝介をただみつめている双眸に首の後ろがざわめく。半歩踏み出せばなくなる僅かな隙間が最後に残された理性の膜だとわかっていて、突き破りたくなる。

「花む……」
「なーんてな! 冗談冗談」

衝動に流されるまま踏み出そうとした孝介より早く、陽介が大きく身体を引いた。余りの事に孝介は一瞬訳がわからなくなる。

「やっべ、なんか出そうになった」

しかし、何やら意味のわからないことをつぶやきながらくるりと向きを変えた陽介の背中を見るうちに、ふつふつと怒りがこみ上げてきた。

「――花村」
「だから冗談だって。んな怖い声出すなよ」

自分がしでかした失態に陽介は気づくことなくおどけている。それが更に孝介の怒りを煽る事なんて爪の先ほども考えていないのだろう。腰の辺りで握り締めた右手の拳が小刻みに震える。

「花村」

いつの間に取り落としたのか空いていた左手で陽介の肩を掴みこちらへ向かせると、加減などと言う言葉を思い出す暇もなく、右拳を思い切り陽介の腹に叩きこんだ。

「ぐはっ!」

会心の一撃。
ガードされる事なく打ち込まれた攻撃は、陽介の身体を崩すには充分過ぎるほど。腹を抱えて地面へと蹲る姿を孝介は冷たい視線で見下ろした。

「な、なにしやがる」

目じりに涙を溜めた陽介がなんとか顔だけこちらへ向けて抗議をするが、突き刺さる冷たい刃に耐え切れず視線を反らす。そんな些細な仕草さえ癇に障った孝介は、陽介の胸倉を掴み力任せに引き上げた。

「で、何が限界だって? 聞いてやるから答えろよ」

逃れる事無く陽介の視線が自分へと向く。その表情には先ほどの熱は見られず、逆に自分への怯えが見て取れた。それに気づいた瞬間、ギッと力を込めて睨み付けていたはずの孝介の目に熱いものがこみ上げてくる。

「ちょ、月森? お前泣いて……」
「うるさい! 花村が悪いんだからな」

さっきから瑣末な事に振り回されすぎて感情の箍が外れてしまったようだ。自分らしくないその姿を見せたくなくて、陽介から手を離すと側に落ちていた鞄を拾い中断していた帰宅を再開する。陽介はと言えば、慌てて立ち上がると制服に付いた砂を払うのもそこそこに、孝介の後を黙って付いてくる。沈黙が二人に重くのしかかったが、どちらもそれ以上口を開かない。そして、本来なら陽介とわかれるはずの辻もそのままスルーして、二人は無言のまま堂島家の玄関へとたどり着いた。

「ただいま」
「お邪魔します」

自分の目の前で閉まらなかった引き戸に誘われ、陽介が上がりこんでくる。それを気配で感じながら先に居間にたどり着いた孝介は、菜々子の姿がない事に気づいた。くるり見渡すと台所のテーブルの上にメモを見つける。見慣れた字で書かれたそれには『みっちゃんのおたんじょう日会に行ってきます』と書かれていた。そう言えばと、この間の日曜に菜々子とプレゼントを買いに行ったことを思い出す。
とりあえず心配はない事を確認しメモを元の場所に戻すと、階段を上り始めた。それに廊下で待っていた陽介も続く。

ぎしぎしと軋む階段を抜け自室の扉を開けると、孝介は持っていた鞄を机の上に放り投げた。そしてそのまま机に備え付けられた椅子に腰をおろして部屋の入り口に視線を向ける。同じく部屋へたどり着いた陽介は、その扉を閉めると奥に進む事無くその場に立ち尽くしていた。

二人以外誰もいない室内に、聞こえるのは窓の外を飛び交う鳥の羽ばたきのみ。放って置いたらそのままいつまでも続くであろう沈黙に耐えかねて、先に口を開いたのは陽介の方だった。

「すんませんでした!」

ガバリと音がする勢いで床に頭を擦り付ける。

「ちょっと色々調子に乗りすぎたっつーか、スイッチ入っちまったっつーか」

頭を上げる事もせず、陽介はひたすら言い募る。

「ホントーにごめんなさい! もうしないから許してください!」

それを先ほどからピクリとも動かない体勢のままみつめ続ける孝介に焦れたのか、陽介はそうっと頭を捻って視線だけ上げた。一度視線が勝ち合い、はっとしてもう一度下げた頭を、一度目より更にゆっくりと戻して様子を伺うも、孝介の視線は陽介をただただ見下ろすだけ。けれど今度は陽介も反らすことをせずこちらをみつめてくる。しばらくそうしてお互いを探りあった後、孝介はゆっくりと目を閉じてため息をひとつついた。

「怒ってた訳じゃないからあやまられても困る」
「え、じゃあなんで」

返事に力を得、上半身だけ起こすと、正座したまま陽介が問う。

「だから聞いただろ? 何が限界でおれにどうして欲しいのかって。それなのにお前はぐらかすし」

面倒な事になる前にと言う理由ではじめたやり取りだったが、陽介のことが心配だった事には違いない。それなのにおどけてはぐらかすとかされれば、誰だって文句のひとつも言いたくなるってものだ。

「悪ぃ」
「いいよ別に。どうせ花村が考えてることなんてわかりきってるし」

実際問題陽介が何をグダグダ考えてるかなんて、聞くまでもないぐらい孝介には筒抜けだった。それでも一応聞こうと言う姿勢をとっただけありがたく思って欲しいくらいだ。

(まあ、それが自衛だったんだけど)

煮詰まった挙句、酷い目に合うのは自分だと言うのが予想できていただけに、先手を打ったにすぎない。

「何だよそれ」
「ヘタレだヘタレだと思ってたけどさ、こうもヘタレだと逆に可愛く思えてくるよな」

さっきまでの不機嫌はどこへやら、笑みを浮かべて陽介に近づくと、肩にかかったままの鞄を首から抜き、脇へと下ろした。

「ちょ、月森?」

そして陽介の手を引いて数歩歩かせ、ソファへと座らせる。自分はその前に立ったまま制服の上着を脱ぎ、いつものように壁にかける。更に陽介のそれに手を伸ばすと、さすがの陽介も腕を取ってそれを遮った。

「何するんだよ」
「何って、セックスに決まってる」
「はぁ?!」

事も無げに告げた台詞に、陽介が飛び上がらんほどに驚く。それを不思議そうにみつめながら、自由になった手でもう一度陽介の上着に手をかけた。

「待て待て待て! お前自分の言ってる事わかってんのかよ!」
「わかってるよ」
「や、わかってねぇよ! セックスだぞ? 性交ですよ性交! エッチ!」

いろんな言葉に置き換えて主張されなくても、わかっている。そして、それこそ陽介がしたかったことだと言うことも。

「うるさい、わかってるって言ってるだろ」
「だから待てって、つか、待ってください!」
「やだ」

必死に抵抗する陽介の服を脱がすのは至難の技だと悟り、だったらと自分の服を脱ぐことにする。上着は先ほど脱いだので、まずは下に着ていたシャツから。一つ、二つとボタンが外れていき、その下から現れる孝介の肌に、いつの間にか凝視していた陽介の喉がごくりと鳴る。

「本気……なのか」
「さっきからそう言ってるだろ」

全てのボタンが外れ、あらわになった胸元に恐る恐る陽介の指が伸びてくる。いつもはなんともない指先が肌に触れたとたん、ビリッと電気が走ったように感じた。

「菜々子ちゃん、帰ってきちまうよな」

陽介も同じ刺激を感じたのだろう、一瞬指を引っ込めたが、次は確固たる意思を持って孝介の肌に触れた。衣類に包まれていた孝介の肌より陽介の掌が僅かに冷たい。けれど、それも程なく孝介の肌の上を滑りつつ熱を奪い取り暖められる。それを合図に片方の腕で孝介の腰を引き寄せ、胸元を顔に引き寄せた。

「今日は友達の家に泊まってくるから帰ってこない」
「でも」
「叔父さんも今日は遅いって朝言ってたし、問題ない」
「――そっか」

ソファに座る陽介の膝を跨ぐように乗り上げると、自分の胸元に埋められている陽介の顔を両手で挟んで上を向かせた。抵抗なく見上げてくる陽介の瞳に、さっき至近距離で見た金色の輝きが垣間見える。怖くないと言ったら嘘になるかもしれないが、その輝きも間違いなく陽介自身だ。
コツリ、と額を合わせてしばらくみつめあう。そして自然と浮かんだ穏やかな笑みと共に二人は唇を重ねた。



本音を言って>>



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