【花鳴】リア充爆発しろ
2012年冬コミの無料配布です。
pixivにだけUpして、こっちにUpするのをすっかり忘れてました;;
春のの新刊で書いている陽介が割と強気(当社比)だったもので、うっかりこんなのが出来上がりました。
いやぁ、私が書く花鳴では至極珍しいパターンだなと。
ごめん、完二ww
*****
「なあ、いいだろ?」
「駄目だって」
「えー、ほんのちょこっとで良いから、頼むよ」
完二が悠との待ち合わせのために二年の教室に入ると、準備を始めている悠に陽介が絡みついていた。
「何してンすか、先輩」
「あ、完二。遅いぞ」
「すんません。掃除当番だったもんで」
べたりとはりついたままの陽介をそのままに、悠がこちらを振り向いた。その肩越しから陽介の視線が容赦なく完二に刺さってくる。
(いったい何が起こってんだ?)
事態が全く理解できない完二は、促されるままに悠の隣の席――千枝の席――に腰を下ろした。
「なあ、悠ってば」
「うるさいな、無理だって言ってるだろ」
そんな完二の事を全身で威嚇しているのにもかかわらず、まるで居ないかのような扱いをする陽介が、執拗に悠に食い下がる。
「何が無理なンすか?」
ここで会話に入るのが得策かどうかはわからないが、このままいつまでも二人だけで話されても埒が明かないような気がして、一か八かで完二は二人の先輩に声をかけた。
「陽介が無理言ってるだけだから、完二は気にしなくていいよ」
「別に無理なんか言ってねーだろ。ただ、勉強教えてくれって言ってるだけじゃん」
「勉強っすか」
それが本当なら、なんでこの二人はこんなに揉めているのだろう。さっぱり意味がわからず、完二は首をかしげる。
「だから、おれはこれから完二に編み物教わるんだよ」
「教わればいーじゃん。そして悠はオレに勉強教えてくれよ」
「意味がわからない」
確かに今日はこれからここで、悠に編みぐるみの作り方を教えることになっている。でも、その横で陽介が勉強していたからといって、特に問題があるとも思えないが、何を悠は頑なに拒むのか。
「つまり、一緒にやりゃいいってことじゃねー?」
「お、完二。話わかるじゃん」
ここに来て初めて陽介が完二に話しかけてきた。けれどまだ、何となく視線が痛い。
(何だってんだよ……)
「だから、いくらおれだって一度二つの事なんかできないって言ってるだろ」
「悠なら大丈夫だって。な完二」
「お、おお。先輩器用っすから」
陽介の勢いに押されて同意するも、実際のところ、悠ならそのくらいなんてことないとも思う。
「陽介……。お前はそれで気が済むんだな?」
「おうよ」
何やら意味深な視線が二人の間を行き来してるように見えるのは気のせいだろうか。
「完二も。本当にいいんだな。陽介が一緒で」
更に意味深なセリフを投げかけられても、完二には何が何やらさっぱりだ。
「いいも何も、何か困ることでもあるんすか?」
「別になーんもない。もしものときはちょこっと目ー瞑ってれば問題なし」
「――陽介」
悠の深いため息もそっちのけで、陽介はガタガタと机を移動させる。自分と悠のものを並べ、完二の座る千枝の席を悠の真ん前に設置し終えると、一度仕舞ったらしい教科書とノートを鞄の中から取り出して自分の机の上に広げた。
悠はと言えば、諦めたように机に座り頬杖をついて完二に準備を促す視線を送ってきた。
指示されるまま、自宅から持ってきた毛糸とカギ針を鞄から取り出すと、一式を悠に手渡す。
「じゃあ、先輩。まずは糸を左手の人差し指にかけて――」
「こう……か?」
完二の説明通りに悠が渡された毛糸を左手の人差し指にかける。そして右手にはカギ針を鉛筆を持つように構えた。
「うぃす。で、こっちから差し込んで、カギ針に毛糸を引っ掛けて引き抜く」
「引っかけて……引き抜!!」
瞬間、目の端を知った顔が掠めていくのが見える。驚いて手元から顔を上げると、陽介が素知らぬふりで口笛を吹く仕草をしていた。
「?」
悠は悠で、微動だにせず。
(何なんだよさっきから)
訳がわからないまま、再び視線を手元に移しひと目編む。
「これを十回やってみて……先輩?」
「あ、ああ、悪い」
まだ動き出さない悠に声をかけると、陽介をギッと睨んでから再びカギ針を毛糸に引っ掛けた。
ひと目、またひと目とゆっくりながらも悠が手を動かすのをじっと見つめていると。またしても視線の端を陽介が掠めていく。
「あ?」
今度はさっきよりよく見えた……気がする。
でも、それは本当に現実に起きたことなのか。
「陽介!!」
「っと、あっぶね」
驚く完二の脇から、悠の拳が陽介に向って繰り出された。が、それは僅かに陽介を捕らえることができず空を切る。
「あの、先輩ら何してんすか」
「いーのいーの、お前は気にしなくて」
「気にしなくていいって言われても、よ」
さっき自分が見たのが本当の事なら、陽介には一言言いたい。
(さんざん人をからかいやがったくせに……ってこれもからかってんのか? もしかして)
ありえない事じゃない。
テレビの中で出会ってから、いったい何度ネタにされたかわからないのだから。
(ここはスルーしとくか)
気を取り直して三度手元に視線を落とし、悠の手本になるように自分のカギ針を動かした。
「っと、これで一段完成――――っ?!」
が、今度は上げた視線がしっかりとそれを捕らえてしまい、完二は思わず息をのんだ。
「あ、バレた」
「……バレたじゃないだろ。確信犯のくせに」
さっきまで悠のそれに触れていた唇から、ちらりと舌をのぞかせて陽介が笑う。その隣には頭を抱える悠の姿。
「あんたら、今……」
「んー? チューしましたけど、何か」
「チュー……」
(ってなんだっけ)
いや、考えるまでもなく――キス――の事だ。
およそ、男同士でやることではない――ハズだ。
「完二? おい、完二!」
「アレ。もしかして刺激強すぎたとか?」
(そういう問題じゃねーだろ!!)
と、心の中では毒づけるが、身体は硬直したままで。
「じゃあ、ショック療法ってことでもう一回言っとくか」
「ちょ、陽介、んんっ」
目の前で再び触れ合う唇と唇。
どのくらいの時間が経ったのか、離れたそれは僅かに光って見えて。
「――――帰っていいッスか」
マジ、リア充爆発しろ!
pixivにだけUpして、こっちにUpするのをすっかり忘れてました;;
春のの新刊で書いている陽介が割と強気(当社比)だったもので、うっかりこんなのが出来上がりました。
いやぁ、私が書く花鳴では至極珍しいパターンだなと。
ごめん、完二ww
*****
「なあ、いいだろ?」
「駄目だって」
「えー、ほんのちょこっとで良いから、頼むよ」
完二が悠との待ち合わせのために二年の教室に入ると、準備を始めている悠に陽介が絡みついていた。
「何してンすか、先輩」
「あ、完二。遅いぞ」
「すんません。掃除当番だったもんで」
べたりとはりついたままの陽介をそのままに、悠がこちらを振り向いた。その肩越しから陽介の視線が容赦なく完二に刺さってくる。
(いったい何が起こってんだ?)
事態が全く理解できない完二は、促されるままに悠の隣の席――千枝の席――に腰を下ろした。
「なあ、悠ってば」
「うるさいな、無理だって言ってるだろ」
そんな完二の事を全身で威嚇しているのにもかかわらず、まるで居ないかのような扱いをする陽介が、執拗に悠に食い下がる。
「何が無理なンすか?」
ここで会話に入るのが得策かどうかはわからないが、このままいつまでも二人だけで話されても埒が明かないような気がして、一か八かで完二は二人の先輩に声をかけた。
「陽介が無理言ってるだけだから、完二は気にしなくていいよ」
「別に無理なんか言ってねーだろ。ただ、勉強教えてくれって言ってるだけじゃん」
「勉強っすか」
それが本当なら、なんでこの二人はこんなに揉めているのだろう。さっぱり意味がわからず、完二は首をかしげる。
「だから、おれはこれから完二に編み物教わるんだよ」
「教わればいーじゃん。そして悠はオレに勉強教えてくれよ」
「意味がわからない」
確かに今日はこれからここで、悠に編みぐるみの作り方を教えることになっている。でも、その横で陽介が勉強していたからといって、特に問題があるとも思えないが、何を悠は頑なに拒むのか。
「つまり、一緒にやりゃいいってことじゃねー?」
「お、完二。話わかるじゃん」
ここに来て初めて陽介が完二に話しかけてきた。けれどまだ、何となく視線が痛い。
(何だってんだよ……)
「だから、いくらおれだって一度二つの事なんかできないって言ってるだろ」
「悠なら大丈夫だって。な完二」
「お、おお。先輩器用っすから」
陽介の勢いに押されて同意するも、実際のところ、悠ならそのくらいなんてことないとも思う。
「陽介……。お前はそれで気が済むんだな?」
「おうよ」
何やら意味深な視線が二人の間を行き来してるように見えるのは気のせいだろうか。
「完二も。本当にいいんだな。陽介が一緒で」
更に意味深なセリフを投げかけられても、完二には何が何やらさっぱりだ。
「いいも何も、何か困ることでもあるんすか?」
「別になーんもない。もしものときはちょこっと目ー瞑ってれば問題なし」
「――陽介」
悠の深いため息もそっちのけで、陽介はガタガタと机を移動させる。自分と悠のものを並べ、完二の座る千枝の席を悠の真ん前に設置し終えると、一度仕舞ったらしい教科書とノートを鞄の中から取り出して自分の机の上に広げた。
悠はと言えば、諦めたように机に座り頬杖をついて完二に準備を促す視線を送ってきた。
指示されるまま、自宅から持ってきた毛糸とカギ針を鞄から取り出すと、一式を悠に手渡す。
「じゃあ、先輩。まずは糸を左手の人差し指にかけて――」
「こう……か?」
完二の説明通りに悠が渡された毛糸を左手の人差し指にかける。そして右手にはカギ針を鉛筆を持つように構えた。
「うぃす。で、こっちから差し込んで、カギ針に毛糸を引っ掛けて引き抜く」
「引っかけて……引き抜!!」
瞬間、目の端を知った顔が掠めていくのが見える。驚いて手元から顔を上げると、陽介が素知らぬふりで口笛を吹く仕草をしていた。
「?」
悠は悠で、微動だにせず。
(何なんだよさっきから)
訳がわからないまま、再び視線を手元に移しひと目編む。
「これを十回やってみて……先輩?」
「あ、ああ、悪い」
まだ動き出さない悠に声をかけると、陽介をギッと睨んでから再びカギ針を毛糸に引っ掛けた。
ひと目、またひと目とゆっくりながらも悠が手を動かすのをじっと見つめていると。またしても視線の端を陽介が掠めていく。
「あ?」
今度はさっきよりよく見えた……気がする。
でも、それは本当に現実に起きたことなのか。
「陽介!!」
「っと、あっぶね」
驚く完二の脇から、悠の拳が陽介に向って繰り出された。が、それは僅かに陽介を捕らえることができず空を切る。
「あの、先輩ら何してんすか」
「いーのいーの、お前は気にしなくて」
「気にしなくていいって言われても、よ」
さっき自分が見たのが本当の事なら、陽介には一言言いたい。
(さんざん人をからかいやがったくせに……ってこれもからかってんのか? もしかして)
ありえない事じゃない。
テレビの中で出会ってから、いったい何度ネタにされたかわからないのだから。
(ここはスルーしとくか)
気を取り直して三度手元に視線を落とし、悠の手本になるように自分のカギ針を動かした。
「っと、これで一段完成――――っ?!」
が、今度は上げた視線がしっかりとそれを捕らえてしまい、完二は思わず息をのんだ。
「あ、バレた」
「……バレたじゃないだろ。確信犯のくせに」
さっきまで悠のそれに触れていた唇から、ちらりと舌をのぞかせて陽介が笑う。その隣には頭を抱える悠の姿。
「あんたら、今……」
「んー? チューしましたけど、何か」
「チュー……」
(ってなんだっけ)
いや、考えるまでもなく――キス――の事だ。
およそ、男同士でやることではない――ハズだ。
「完二? おい、完二!」
「アレ。もしかして刺激強すぎたとか?」
(そういう問題じゃねーだろ!!)
と、心の中では毒づけるが、身体は硬直したままで。
「じゃあ、ショック療法ってことでもう一回言っとくか」
「ちょ、陽介、んんっ」
目の前で再び触れ合う唇と唇。
どのくらいの時間が経ったのか、離れたそれは僅かに光って見えて。
「――――帰っていいッスか」
マジ、リア充爆発しろ!