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 【花主】1+1=?

5月のスパと6月のシティで無料配布したSSです。
遅くなりましたがUPしますねー。

一応『「あそこでのの字を書いてるのが自分の恋人です」・3』の続きのプチ話になってます。
先にそちらを読んで頂いた方がわかりやすいかな?



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「なーなこちゃん」

 休日の午後、孝介と陽介は菜々子を伴ってジュネスにきていた。小学生同伴とはいえ、れっきとした『デート』である。まあ、その場所がジュネスと言うのはなんとも言いようのない物を感じるが、こんな田舎だし、それこそ菜々子を連れて遠出などできるはずもない。そして、そんな些細なことより孝介といられることの方が陽介にとって重要なことだ。

 更に言うなら菜々子といっしょにいることで、実はいつもよりかなり親密になれる。多少スキンシップが過多でも、仲のいい兄妹の振りをして菜々子を挟んでしまえば、孝介も寛大だ。もちろん菜々子自身とても可愛いし大好きだ。だから、ほんのちょこっと―実際のところだいぶだが―ダシに使ってしまうのを許して欲しい。

「なあに? よーすけお兄ちゃん」
「あそこにプリクラあるんだけど、菜々子ちゃん撮ったことある?」

 陽介の指差す先には大きな箱の回りを布で囲った機械が数個設置されている。辺りには八高生と思われる女子達が何人か群がっていた。代わる代わる布の向こうに姿を消しながらキャラキャラとはしゃぐ姿に、菜々子の目が釘付けになる。

「ない! 撮りたい!」
「おっし、じゃあ一緒に撮ろっか!」
「うん! お兄ちゃーん、お兄ちゃんもはやくはやく!」

 のんびりとジュースを飲んでいた孝介の手を菜々子が引っ張る。それほど強い力ではないが、そもそも逆らう気が無い孝介の身体は、よろよろとしながらも菜々子に連れられてプリクラの機械のそばまでやってきた。

「えっと……あ、あったあった。菜々子ちゃん、これの上に乗って。そう、ここの枠の中が写るから良くみて」

 陽介が探してきた踏み台に言われるまま菜々子が乗る。その菜々子を挟むように、陽介と孝介が画面に映りこんだ。

「よっし、行くぞ」

 パシャリとシャッター音がして一枚目撮影終了。

「ほら、まだ続くから菜々子ちゃん笑って笑って」

 今度は菜々子に顔を寄せてパシャリ。次はどうすると考え、陽介はあることを思いついた。すぐさま孝介の腕を引っ張り耳元へ口を寄せる。菜々子の頭の上で二人が秘密談義をしている間にまたパシャリ。

「本気か?」
「いいじゃん、菜々子ちゃんも喜ぶって。愛情表現愛情表現。てー訳で、最後行くぞ」

 四枚目、最後のシャッターが降りる瞬間、菜々子の両頬に二人の唇が寄せられた。


          *


「えへへー」

 待つことしばし、機械から出てきた写真に菜々子は非常に満足そうだ。これで少しは陽介の罪悪感も薄くなる。結局自己満足に過ぎない気もするが、まあ良いだろう。

「菜々子、いつまでも眺めてるとなくすぞ?」
「だいじょうぶだもん。あ、これ同じのなんまいもあるよ?」

 四枚撮った写真が複数枚づつあることに気づき、菜々子がそれを差し出して見せた。

「お兄ちゃんたちのぶんだ!」
「そうだな。さっき機械の所に鋏があったから切ってくる。菜々子はそこで待ってろ」
「うん!」

 言われるままおとなしく座ってジュースを飲み始めた菜々子を置いて、孝介が先ほどの機械へと歩き始めた。その背中をみて陽介も『トイレにいってくる』と菜々子に断って立ち上がった。当然向かうのはトイレなどではなく孝介と同じプリクラ。
 一足先に機械にたどり着いた孝介が、備え付けの鋏で写真を切り分けてる隙を狙って機械にコインをいれる。そしてシャッターが降りる瞬間、カーテン越しに孝介を機械の中に引きこんだ。

「花村?!」
「はい笑って笑ってー」

 訳のわからないまま一枚目。暴れる孝介の両手を何とか押さえ込んで二枚目。その腰をつかんで三枚目。最後はその唇を唇で塞いで四枚目。

「貴様……」
「ぐがっ!」

 拳が繰り出されてくることは予想の範囲内だったので上手に避けるつもりが、運悪くカーテンの向こうを通りかかった人にぶつかって避け切れず、陽介は頬にしっかりと一撃くらってしまった。

「こ、孝介くんひどい。手加減してくれても」
「うるさい、自業自得だ!」

 怒れる恋人はその普段の様子からは想像できないほど荒々しく床を踏みしめ、機械内に倒れる陽介に見向きもせずに立ち去った。

「こりゃマジで後になるかも」

 いささかガクガクする気がする頬と顎をさすりながら何とか身体を起こすと、取り出し口から写真が現れた。そこにはもちろん、先ほどの二人の記念すべき撮影がしっかりと刻まれている。

「ま、怪我の巧妙ってことで、いいか」

 手早く四枚目を剥がすと携帯の裏側にある電池のカバーを外す。そしてその内側に貼り付けまた元通りに。

「これで、二枚目」

 ホクホクとポケットの中に携帯を戻すと、ニヤケ顔をそのままに孝介と菜々子の待つ場所へと戻って行った。




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