【花鳴】100%シトロンBoys (オフラインサンプル)
2014/05/03、スパコミの新刊サンプルです。
相変わらずの花鳴。
そしてどうもこのくらいの時期の話が好きなものでやたら書いてる気がする、9〜10月の話です。
正確には9/23〜27ぐらいの間。
ゲームとアニメの良いトコ取りを目指している感じです。
*****
九月も半ばを過ぎ、修学旅行の余韻からも開放され何とか日常が戻ってきたのも束の間、直斗の行方不明事件が起こりまたも慌しくなった。
つまりは自分たちの推測通り、犯人は久保ではなく、これからもいつ同じようなことが起こっても不思議はないということ。
だが、その切っ先となった直斗誘拐事件は、運良くすんなりと救出することができ、後は彼――彼女か――の快復を待つばかりだ。
そして再び、一時の平穏が訪れる。
「ちょっと! そこ暢気に遊んでないでよ」
「別に遊んでるわけじゃねーケド、とりあえず俺の仕事は終わったろ?」
だというのに、今陽介たちがいるのは間違いなくテレビの中。
「呪文唱えたらそれで良いってもんじゃないでしょー! 怠けんな!」
「いやぁ、里中さんのキックがあれば俺たちなんて遊んでるのが仕事ってもんだって」
「花村、アンタねー!!」
せっかくの休日ではあるが、前述通りいつ何が起こっても不思議のない状況なだけに『平穏な日常をのんびり過ごすわけには行かない』という意見の一致を見て、今日集まれる千枝、クマ、それに陽介と悠とで連れ立ってテレビの中に入り込んでいるわけだが。
「そろそろここでのレベル上げは無理がありそうだな」
「まあなー。一番強いやつでも俺たちよりも十近く違うし」
特捜のメンバーが作ったダンジョンに入り込むのは、やはりなんとなく気が引けて。ついつい久保が作り出したボイドクエスト頼りな戦闘を繰り返してきたが、これだけシャドウとのレベルに差が出てくると、なかなか経験値にならない。
「九章まで入り込めばあのロボットがいるんだけどな」
一体で三千を超える経験値を持つ鋼鉄の巨兵や真紅の砲座が出没する階までの道のりは長く、その間に出くわすほぼ雑魚に近いシャドウに手間取ることが多くなり、これでは本末転倒だ。
「場所変えた方がいいかもしれないな」
「だな、秘密基地行っとくか」
「許可が取れると一番良いんだけど」
「白鐘か。元気になるにはもうちょっとかかるよなぁ」
直斗をテレビの中から救い出してそろそろ一週間。幾ら自ら勇んで飛び込んだところだとはいえ、負ったダメージは早々消えやしないだろう。最低でも後もう一週間はかかる。
その間ぶらぶらしているよりは大半が雑魚でも戦闘を繰り返していた方が、数字的な経験値のみならず、連携や個人的な技の習熟には良い気がする。
「いい加減にして!」
「おぅわ!! 何だよ里中。いきなり大声出してびっくりすんじゃねぇか!」
二人がグダグダと話している間にクマと二人でシャドウをたこ殴りにしていた千枝が、その仕事を終えすぐ傍まで戻ってきていた。
「うるさいっ! あたしらにやらせるだけやらせて二人はなにやってんのよ! 少しは手伝えっての!!」
「いやだから、そこは適材適所で……」
「ああ?!」
陽介と悠が魔法で弱点をつき、弱ったところで千枝とクマでたこ殴りというパターンが、雑魚を蹴散らすには最善の方法と今まで突き進んできていたのだが、さすがにそろそろ千枝の体力が限界か。
「大体ねー、か弱い女子に体力使わせてんじゃないわよ! 全く足太くなったらどーしてくれんのさ」
「大丈夫だって、もう充分里中の足は太いか――ぶふっぐ!!」
陽介に皆まで言わせず、千枝渾身のキックが陽介の股間を蹴り上げた。
「〜〜〜〜〜〜〜っ!」
「ち、千枝ちゃん怖いクマ」
思わずキュッとなった股間を悠も我知らず抑える。その傍で一撃を食らった陽介は死に体だ。
「次はアンタらでやんなさいよね」
どうしてこう特捜の女子は皆こんなに男前なんだろうか。それとも自分たちがヘタレ過ぎるんだろうか。
後者であることは認めたくないが、とりあえずここは頷くしかないと悠はコクコクと首を縦に振った。
「――てぇ。使い物にならなくなったらどうしてくれるんだよ! お婿に行けなくなるんだぞ!!」
「行かなきゃいーじゃん。ガッカリ王子と結婚しようなんて物好きいるわけないし」
どうやら千枝の怒りはかなりのものらしく、千枝にしては辛らつな言葉を陽介に浴びせかけてくる。
「男の股間蹴り上げるような女だって嫁の貰い手なんかねぇっての」
さすがに食って掛かる勇気は持ち合わせていないようで、陽介の反撃は傍に立っていた悠の耳にも届くかという小さなものだった。
「何か言った?」
「何でもありません」
ここで逆らったら今度こそトドメを刺されかねんと、クマを交えた三人はフルフルと頭を振った。
「やっぱ場所変えるか」
「そうだな、白鐘には事後承諾になっちまうけど」
別に切羽詰っているわけではないが、のんびりしてて良い訳でなし。
千枝の鬱憤もかなりのものだし、ここで気持ちをリセットするのもいいかもしれない。
「じゃ、カエレール使って……」
そう悠が道具を探り始めたのと同時に、どこからともなくゴッドハンドが現れた。
これなら陽介と千枝に任せておけると、悠はそちらを一瞥もせずに道具の中からカエレールを探す作業に集中した。
「行くぜ! ジライヤ!」
予想通り陽介がジライヤを呼び出して呪文を唱える。上手くゴッドハンドの弱点をつくことに成功し、次は千枝のキックの番。
「わわわわわ」
さっきから率先してたこ殴りしてた弊害か、ちょっとのことでバランスを崩した千枝のキックの矛先が陽介へと向かった。全く予測していなかった陽介にそれを避けることが出来るはずもなく。
「がぁっ!」
まともに食らって身体が吹っ飛ぶ。
そして更に運の悪いことに、その身体は一直線に悠のもとへ――。
相変わらずの花鳴。
そしてどうもこのくらいの時期の話が好きなものでやたら書いてる気がする、9〜10月の話です。
正確には9/23〜27ぐらいの間。
ゲームとアニメの良いトコ取りを目指している感じです。
*****
九月も半ばを過ぎ、修学旅行の余韻からも開放され何とか日常が戻ってきたのも束の間、直斗の行方不明事件が起こりまたも慌しくなった。
つまりは自分たちの推測通り、犯人は久保ではなく、これからもいつ同じようなことが起こっても不思議はないということ。
だが、その切っ先となった直斗誘拐事件は、運良くすんなりと救出することができ、後は彼――彼女か――の快復を待つばかりだ。
そして再び、一時の平穏が訪れる。
「ちょっと! そこ暢気に遊んでないでよ」
「別に遊んでるわけじゃねーケド、とりあえず俺の仕事は終わったろ?」
だというのに、今陽介たちがいるのは間違いなくテレビの中。
「呪文唱えたらそれで良いってもんじゃないでしょー! 怠けんな!」
「いやぁ、里中さんのキックがあれば俺たちなんて遊んでるのが仕事ってもんだって」
「花村、アンタねー!!」
せっかくの休日ではあるが、前述通りいつ何が起こっても不思議のない状況なだけに『平穏な日常をのんびり過ごすわけには行かない』という意見の一致を見て、今日集まれる千枝、クマ、それに陽介と悠とで連れ立ってテレビの中に入り込んでいるわけだが。
「そろそろここでのレベル上げは無理がありそうだな」
「まあなー。一番強いやつでも俺たちよりも十近く違うし」
特捜のメンバーが作ったダンジョンに入り込むのは、やはりなんとなく気が引けて。ついつい久保が作り出したボイドクエスト頼りな戦闘を繰り返してきたが、これだけシャドウとのレベルに差が出てくると、なかなか経験値にならない。
「九章まで入り込めばあのロボットがいるんだけどな」
一体で三千を超える経験値を持つ鋼鉄の巨兵や真紅の砲座が出没する階までの道のりは長く、その間に出くわすほぼ雑魚に近いシャドウに手間取ることが多くなり、これでは本末転倒だ。
「場所変えた方がいいかもしれないな」
「だな、秘密基地行っとくか」
「許可が取れると一番良いんだけど」
「白鐘か。元気になるにはもうちょっとかかるよなぁ」
直斗をテレビの中から救い出してそろそろ一週間。幾ら自ら勇んで飛び込んだところだとはいえ、負ったダメージは早々消えやしないだろう。最低でも後もう一週間はかかる。
その間ぶらぶらしているよりは大半が雑魚でも戦闘を繰り返していた方が、数字的な経験値のみならず、連携や個人的な技の習熟には良い気がする。
「いい加減にして!」
「おぅわ!! 何だよ里中。いきなり大声出してびっくりすんじゃねぇか!」
二人がグダグダと話している間にクマと二人でシャドウをたこ殴りにしていた千枝が、その仕事を終えすぐ傍まで戻ってきていた。
「うるさいっ! あたしらにやらせるだけやらせて二人はなにやってんのよ! 少しは手伝えっての!!」
「いやだから、そこは適材適所で……」
「ああ?!」
陽介と悠が魔法で弱点をつき、弱ったところで千枝とクマでたこ殴りというパターンが、雑魚を蹴散らすには最善の方法と今まで突き進んできていたのだが、さすがにそろそろ千枝の体力が限界か。
「大体ねー、か弱い女子に体力使わせてんじゃないわよ! 全く足太くなったらどーしてくれんのさ」
「大丈夫だって、もう充分里中の足は太いか――ぶふっぐ!!」
陽介に皆まで言わせず、千枝渾身のキックが陽介の股間を蹴り上げた。
「〜〜〜〜〜〜〜っ!」
「ち、千枝ちゃん怖いクマ」
思わずキュッとなった股間を悠も我知らず抑える。その傍で一撃を食らった陽介は死に体だ。
「次はアンタらでやんなさいよね」
どうしてこう特捜の女子は皆こんなに男前なんだろうか。それとも自分たちがヘタレ過ぎるんだろうか。
後者であることは認めたくないが、とりあえずここは頷くしかないと悠はコクコクと首を縦に振った。
「――てぇ。使い物にならなくなったらどうしてくれるんだよ! お婿に行けなくなるんだぞ!!」
「行かなきゃいーじゃん。ガッカリ王子と結婚しようなんて物好きいるわけないし」
どうやら千枝の怒りはかなりのものらしく、千枝にしては辛らつな言葉を陽介に浴びせかけてくる。
「男の股間蹴り上げるような女だって嫁の貰い手なんかねぇっての」
さすがに食って掛かる勇気は持ち合わせていないようで、陽介の反撃は傍に立っていた悠の耳にも届くかという小さなものだった。
「何か言った?」
「何でもありません」
ここで逆らったら今度こそトドメを刺されかねんと、クマを交えた三人はフルフルと頭を振った。
「やっぱ場所変えるか」
「そうだな、白鐘には事後承諾になっちまうけど」
別に切羽詰っているわけではないが、のんびりしてて良い訳でなし。
千枝の鬱憤もかなりのものだし、ここで気持ちをリセットするのもいいかもしれない。
「じゃ、カエレール使って……」
そう悠が道具を探り始めたのと同時に、どこからともなくゴッドハンドが現れた。
これなら陽介と千枝に任せておけると、悠はそちらを一瞥もせずに道具の中からカエレールを探す作業に集中した。
「行くぜ! ジライヤ!」
予想通り陽介がジライヤを呼び出して呪文を唱える。上手くゴッドハンドの弱点をつくことに成功し、次は千枝のキックの番。
「わわわわわ」
さっきから率先してたこ殴りしてた弊害か、ちょっとのことでバランスを崩した千枝のキックの矛先が陽介へと向かった。全く予測していなかった陽介にそれを避けることが出来るはずもなく。
「がぁっ!」
まともに食らって身体が吹っ飛ぶ。
そして更に運の悪いことに、その身体は一直線に悠のもとへ――。