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 【花鳴】モノポリー

10/7のSPARKで無料配布した花村×鳴上です。
すっごく久しぶりにへたれてない陽介を書いた気がするー!(あくまで当社比)
そして、積極的に陽介を独占したがる悠くん。
アニメの主人公はちょっとぶっ飛んでてこのくらいフツーにやっちゃいそうな気がするから出来る我儘ぶりです。

読んでいただければわかると思いますが、すでに出来上がってる二人です。
ええ、リア充爆発しろぐらいの心持ち。
ごめん千枝ちゃん雪ちゃん。

時期としては十月の半ばぐらいのお話なのですが、言わなきゃわからんわな;;



*****




「え、そりゃちょっと無理」
「なんで?」
「なんでって……やりきれる自信ねぇもん」

図書室の一角。
テスト勉強という名目の教科書とノートを広げたその上で、陽介と悠はひっそりと話をしていた。

「自信がないからやらないじゃ意味がないだろ?」
「そりゃそうだけどよー、人間出来る事と出来ない事があるっつか」

普段のさぼり癖が祟って、全くと言っていいほど手付かずなテスト範囲に真っ青になり、悠に泣きついたのがほんの一時間前。
テストはもう明後日からだ。
いくら悠が付きっきりで教えてくれるとはいえ、これから全てを網羅するのは些か無茶というもの。
ならばせめて的を絞った勉強に切り替えたいと悠に進言したのだが。

「やればできるよ、陽介なら」
「満面の笑みで親指立てたって、無理なもんは無理だっつーの!」

この根拠のない自信はいったい何なんだ。
ときどきこの不敵な男の頭の中身を覗いてみたくなる。

(でも、こいつの場合やるっつったらやるかんな)

そのための努力を惜しんでないのも知ってるだけに、これが悠自身の事だったら陽介だってここまで抵抗はしない。

「そっか、陽介はおれの事好きじゃないんだ?」
「ちょ! おま! ここどこだと!」

決して大きな声だったわけじゃないが、事が事だけに陽介は慌てて周囲を見回した。が、取り立てて問題があるようには見えず、ホッと胸を撫で下ろす。

「陽介」
「う、そりゃ……好きだけど」

促され極力小さな声ではあるが答えると、悠は嬉しそうに微笑んだ。

「なら、出来るよな」
「……」

固辞してもいいのだろうが、それだと目の前のテストという名のボスを攻略することは難しい。
陽介は、諦めたように両手を上げてため息交じりに同意した。

「交渉成立。今日からテスト最終日までな」
「りょーかい」

そして陽介の天国のような地獄が始まった。


*****


テスト六日目。
陽介は既に疲労困憊だった。
悠のはってくれたヤマはほとんどハズレがなく、テスト自体は至極順調に攻略して来たのだが――前の席の悠はその上を行く筆の止まらなさを発揮し神がかり的だ――問題はそこじゃなかった。
むしろ、テスト中の方が疲れないっていったいどういうことかと、真剣に頭を抱えたくなる。

「……あと一日」

何とか今日も二科目終了して、放課後。とっとと家に帰ってしまえば残すはあと一日。
悠との約束も明日までだ。

「がんばれオレ」
「花村?」

ぼそりと呟いた声が耳に入ったのか、机に突っ伏した陽介の頭上から千枝の声が降ってきた。知らず、ビクリと身体が震える。
ここが今日の山場か――。

「ちょっと、無視しないでよね」

したくてしてるわけじゃない。

「花村ってば、聞こえてんでしょーが!」
「ちょっと千枝、やめなよ」
「だってさー」

自分の事は放っておいて、このまま大人しく帰ってくれと必死に願うが、それも叶わず。

「花村くん、ここのところずっとそんな感じだよね? 具合悪いの?」

雪子が優しい言葉とともに、陽介に向ってそっと手を伸ばしてきた。その手首を悠がやんわりとつかむ。

「鳴上くん?!」
「天城、いいから」
「え、でも……」
「大丈夫だよな、陽介」

悠が声をかけたなら無視はできない。顔をゆっくりと上げ視線を悠に固定すると、向けられた笑顔に顔が紅潮するのがわかる。

「そう? だけど顔赤いよ?」

(そりゃそうだろ。悠の顔をこんな近くで凝視してんだから)

好きな相手をじっとみつめて、しかもその相手が至上の笑みを浮かべて自分をみつめ返しているとなれば、赤くなるなと言う方が無茶だ。

「なぁ、悠。……勘弁してくれ」
「だーめ。約束だろ?」

駄目だ、一度見つめてしまうと、今度は視線を外すことが困難になる。程なく自然と自分の周りの空気は色めいてきて、二人の世界を作り出すしかなくなる。しかも、悠にはそれを隠すつもりもフォローするつもりも全くないとなれば、いかな鈍い二人でも何かを感じ取るのは至極簡単。

「ちょっと君たち、二人でみつめあって何なのいったい」
「もしかして、私たちお邪魔……だったりして?」

二人に答えられない陽介の代わりに、悠が肯定としか取れない笑顔で二人を威嚇(?)する。

「か、帰ろうか千枝」
「う、うん、帰ろう雪子」

悠の醸し出す雰囲気にのまれるようにして、女子二人は後ずさりをしながら陽介たちから距離をとる。

「じゃ、じゃあね!」
「ばいばい」

脱兎のごとく教室から飛び出した雪子と千枝の足音が遠のくと、他のクラスメイトもいつの間にやら退場していて。残されたのは、みつめあって顔を赤くする男子二人。

「悠、お前本当に嬉しそうだな」
「悪いか?」
「悪くは……ねぇけど、気が気じゃねぇわ」

既に休日をはさんで一週間も、陽介の目と耳は悠に支配されている。
悠だけをみつめ、悠の声だけを聞くのはもちろん願ったりかなったりなのだが、色々駄々漏れるのが問題だ。

「隠そうとするから気が休まらないんだ。いっそ、カムアウトしちゃえば……」
「いやいやいや、それはどうよ」

そりゃ、『悠はオレのだ宣言』ができれば、悠の周りに寄ってくるあらゆるものを排除できるだろうが、失うものも大きい。
ここ半年で自分じゃ気付かなかった自分をかなり曝け出してきたつもりだが、陽介の勇気パラメーターはまだそこまで高くない。

「別におれは良いのに」
「……悠」

けれど、憂いを秘めた顔で俯かれると。

(いかん、ぐらっときた今!)

「だーっ!! もう」

二人の間にあった自分の机を迂回して悠の隣に立つと、ギュウッとその身体を抱きしめた。

「ほんと、お前には敵わねぇわ」

椅子に座ったまま陽介の胸に抱かれた悠が僅かに身じろぎ、陽介の腰に腕を回す。

「明日まではおれだけの陽介だからな」
「ばーか。オレはいつだってお前のモンだし、お前だって俺のモンだかんな」
「――そうだな」

ほんの一週間前の約束。

『誰も見ないで。誰とも話をしないで。おれだけの陽介になって』

確かにすごく疲れたけれど、恋人のこんなに幸せそうな顔が見れるなら、報われる。

「好きだぜ、悠」

今日見た中でも一番の笑顔で見上げてきた悠の唇に、陽介はそっと自分のそれを落とした。