【花主】恋愛シミュレーションゲーム
3/18の春シティでプチのカードラリー用のペーパーに使ったSSです。
まあ、相変わらず色々残念な仕上がりで;; 笑って貰えれば嬉しいです。
ちなみに念のため。
文中に出てくるゲームは架空のゲームで、たとえどんなに似たものが存在しても
全くの別物であることを御理解ください;;
まあ、たわごとです、私の;;;;;
****
――おかしい、こんな筈じゃなかったのに。
陽介は手にした携帯ゲーム機の画面を覗き込みながら、小さく首を傾げた。
その中には、表情がほとんど変わらない茶色い髪をした少年の顔が映し出されている。
「なんでオレ、男なんて口説いてんの」
自分で買ったソフトなのに、それを初めてプレイした時から、ずーっとその疑問が頭から離れない。
『と○めきメ○リアル』って男性向けのゲームだとばかり思っていたのに。
本当は『ラブ○ラス』を買いに行ったのだが、お目当てであるそれは完売状態で。それならばと同じメーカーのこのソフトを手に取ったわけなのだが。
「あん時の店員なんか言いたそうだとは思ったんだよ」
タイトル名の後ろに付いた文字まではきちんと読まずにレジに行き、物言いたげな店員に気づいていたのにスルーして手に入れたソフトは、衝撃の女性向けゲームだったわけだ。
「ったく、パッケージに絵くらい描いとけってんだ!」
そうだ、せめて文字だけのパッケージじゃなければ、いかなうっかり者の陽介とて、それが女性向けだと一発で分かったはずだ。
「なまじ、知られすぎてるゲームってのも問題だ……」
聞いたこともないタイトルだったら、もう少し注意して裏面も読んだのにと悔しくなる。
が、とにもかくにも全てが後の祭りだ。
それならそれで、さっさと中古で売ってしまえばいいのに、興味本位で初めて見たのが運のつき。中のキャラの一人がどうにも気になって仕方なくなってしまった。
その彼は、ファッションモデルをしている有名人で、覚めた印象の強い茶色い髪の優等生。
ビジュアル的な部分だけを抜き出すと、そうでもないのだが、どことなくある人物を彷彿とさせた。
『鳴上悠』
この春都会から来た転校生で、陽介の相棒。特捜のリーダーでとにかく頼りになる奴。
決して口数は多くないが、そのあまりにも全てにおいて出来すぎる感じが、やっぱり似てると陽介は思った。
「おまけに猫好き」
そう思い始めたら、ついつい攻略し始めていて。そしたらこれがとんでもなく難関なのだ。
「なんだこの、高嶺の花っぷりは!」
勉強も運動もとにかく出来なくちゃいけなくて、できたとしても、おいそれとは一緒に帰ってもくれない。パラメータ上げに必死になれば、他のキャラクターが勝手に自分に惚れてきて、さらに勝手に怒って評判下がるとか、とんでもないリアル設定に陽介はもう疲労困憊だ。
「こんな奴いるかっての! っているんだよ!」
恐ろしい、本当に恐ろしい。でもやめられない。これが恋愛シミュレーションの恐ろしさか。
「さっきから何騒いでんすか」
「ぅわ!」
前から頭を突き出してきた完治に驚いて、危うくゲーム機を取り落とすところだ。
「脅かすなよ!」
「いや、別に脅かすつもりなんかねぇっすけど」
慌ててゲーム機を閉じてそれとなく体の後ろに隠したのに、それを今度は後ろから引き抜かれた。
「何すんだよ!」
「いや、だって、あんだけ騒いでれば気になるだろ」
取り上げたゲーム機を開こうとしているのは悠で。それだけは何としても阻止しなくてはならない。
「ゲームがちょっと難しかっただけだって。ほら、返せよ」
事実だ。実際難しくて音をあげかけているのだ。だから返してほしい。必死に悠のほうに手を伸ばすが、それより早く頭の上に高く抱えあげられ、空ぶる。
「何のゲームだよ」
「いーじゃん、何のゲームでも!」
これが、当初の予定通りのソフトだったら、文句言いつつ見せて回っただろうが、口説いている相手が男キャラではとてもじゃないが見せられない。
「気になるっすよねぇ」
「なあ」
今度は二人で並んでこちらを窺いながら、そうっと開こうとする。
「いやいやいや、そんな大したゲームじゃないから、気にすんな、な。そ、それよりさー今日の放課後、テレビん中行こうぜ」
話題を逸らそうと試みるも。二人の興味は逸れそうもない。
「あー! モロキンがこっち見てる」
「え」
よし今だ! と手を伸ばしたが、つられたのは完治だけで悠のこちらをしっかり見ていた。が、飛び込むようにした身体は急にとまらない。
「うわぁぁ!」
悠にタックルする型になり、二人はまとめて床へと倒れこんだ。その衝撃で悠の手から離れたゲーム機がぱっくりと口を開けて宙へ舞う。
「っと、何してんっすか先輩たち」
床にたたきつけれれるのを覚悟したが、うまい具合に完治がそれをキャッチした。が。
「見るな完治!」
もちろん開いた画面の中には、攻略中の彼の顔。
「なになに?『俺とおまえの周りだけ、時間が止まってるみたいだ』? なんじゃこりゃ」
あああああ、よりにも寄ってそんなセリフが出てる場所で止まってるなんて。
「恋愛シミュレーションゲームだな」
がっくりと項垂れたまま、床に這いつくばる陽介とは違い、起き上った悠が完治の手元を覗き込む。
「しかもこれ、攻略キャラクターが男じゃないか」
「はぁ?!」
カチカチとボタンを押す音がして、どうやら先に進めているのだろう。
「先輩、人に散々なこと言っといて、自分がそうなんじゃねーか!」
「いや、違うって! そういうわけじゃ!」
ない、はずだ。いや、いくら悠に似てるからって男口説いてる段階で、否定できないのか。
「実は……」
もう、充分恥はかいたんだ。どこまででも一緒だと思い、事の顛末を二人に話して聞かせた。
「うっかりにも程があるだろ」
「うるせぇな」
「ツメが甘いっすよね」
「てめぇに言われたくねぇよ!」
冷たい視線を浴びせられて、思わず正座をしていた自分がどんどん小さくなってる気がする。
「でも、先輩に似てるからって、普通やらねぇだろ」
「そっか? なんかここまで出来た奴だと気にならねぇ?」
「すげえとは思うけどよ」
だとすると、なんで自分はこんなにも必死にこの彼を口説いていたのか。
(なんかヤバイ考えにぶち当たりそうな気がする)
背中を流れる冷たい汗を感じながら、こっそりと悠の顔を窺う。
「陽介、おれのこと大好きだろ」
そんな気持ちを知ってか知らずか、画面から目を離さないままサラリと図星をさしてくる悠が恐ろしい。
「はい、そういうことにしておいてください、って、ええ!
深い意味を考えちゃだめだと、よく聞きもせずとにかくここは一刻も早い事の収束を願って同意することにしたのだが。
「なら良いや」
「え、良いのかよ!」
よくわからないが悠はご機嫌だ。そして、そっとゲーム機を閉じ、再び陽介の手へと返してよこす。
「攻略、頑張れ」
「えっと、それは……」
ゲームの彼か、それとも目の前の悠か。
ただ笑うだけの悠の表情からは判別ができず、陽介はただただ、混乱するばかりだった。
まあ、相変わらず色々残念な仕上がりで;; 笑って貰えれば嬉しいです。
ちなみに念のため。
文中に出てくるゲームは架空のゲームで、たとえどんなに似たものが存在しても
全くの別物であることを御理解ください;;
まあ、たわごとです、私の;;;;;
****
――おかしい、こんな筈じゃなかったのに。
陽介は手にした携帯ゲーム機の画面を覗き込みながら、小さく首を傾げた。
その中には、表情がほとんど変わらない茶色い髪をした少年の顔が映し出されている。
「なんでオレ、男なんて口説いてんの」
自分で買ったソフトなのに、それを初めてプレイした時から、ずーっとその疑問が頭から離れない。
『と○めきメ○リアル』って男性向けのゲームだとばかり思っていたのに。
本当は『ラブ○ラス』を買いに行ったのだが、お目当てであるそれは完売状態で。それならばと同じメーカーのこのソフトを手に取ったわけなのだが。
「あん時の店員なんか言いたそうだとは思ったんだよ」
タイトル名の後ろに付いた文字まではきちんと読まずにレジに行き、物言いたげな店員に気づいていたのにスルーして手に入れたソフトは、衝撃の女性向けゲームだったわけだ。
「ったく、パッケージに絵くらい描いとけってんだ!」
そうだ、せめて文字だけのパッケージじゃなければ、いかなうっかり者の陽介とて、それが女性向けだと一発で分かったはずだ。
「なまじ、知られすぎてるゲームってのも問題だ……」
聞いたこともないタイトルだったら、もう少し注意して裏面も読んだのにと悔しくなる。
が、とにもかくにも全てが後の祭りだ。
それならそれで、さっさと中古で売ってしまえばいいのに、興味本位で初めて見たのが運のつき。中のキャラの一人がどうにも気になって仕方なくなってしまった。
その彼は、ファッションモデルをしている有名人で、覚めた印象の強い茶色い髪の優等生。
ビジュアル的な部分だけを抜き出すと、そうでもないのだが、どことなくある人物を彷彿とさせた。
『鳴上悠』
この春都会から来た転校生で、陽介の相棒。特捜のリーダーでとにかく頼りになる奴。
決して口数は多くないが、そのあまりにも全てにおいて出来すぎる感じが、やっぱり似てると陽介は思った。
「おまけに猫好き」
そう思い始めたら、ついつい攻略し始めていて。そしたらこれがとんでもなく難関なのだ。
「なんだこの、高嶺の花っぷりは!」
勉強も運動もとにかく出来なくちゃいけなくて、できたとしても、おいそれとは一緒に帰ってもくれない。パラメータ上げに必死になれば、他のキャラクターが勝手に自分に惚れてきて、さらに勝手に怒って評判下がるとか、とんでもないリアル設定に陽介はもう疲労困憊だ。
「こんな奴いるかっての! っているんだよ!」
恐ろしい、本当に恐ろしい。でもやめられない。これが恋愛シミュレーションの恐ろしさか。
「さっきから何騒いでんすか」
「ぅわ!」
前から頭を突き出してきた完治に驚いて、危うくゲーム機を取り落とすところだ。
「脅かすなよ!」
「いや、別に脅かすつもりなんかねぇっすけど」
慌ててゲーム機を閉じてそれとなく体の後ろに隠したのに、それを今度は後ろから引き抜かれた。
「何すんだよ!」
「いや、だって、あんだけ騒いでれば気になるだろ」
取り上げたゲーム機を開こうとしているのは悠で。それだけは何としても阻止しなくてはならない。
「ゲームがちょっと難しかっただけだって。ほら、返せよ」
事実だ。実際難しくて音をあげかけているのだ。だから返してほしい。必死に悠のほうに手を伸ばすが、それより早く頭の上に高く抱えあげられ、空ぶる。
「何のゲームだよ」
「いーじゃん、何のゲームでも!」
これが、当初の予定通りのソフトだったら、文句言いつつ見せて回っただろうが、口説いている相手が男キャラではとてもじゃないが見せられない。
「気になるっすよねぇ」
「なあ」
今度は二人で並んでこちらを窺いながら、そうっと開こうとする。
「いやいやいや、そんな大したゲームじゃないから、気にすんな、な。そ、それよりさー今日の放課後、テレビん中行こうぜ」
話題を逸らそうと試みるも。二人の興味は逸れそうもない。
「あー! モロキンがこっち見てる」
「え」
よし今だ! と手を伸ばしたが、つられたのは完治だけで悠のこちらをしっかり見ていた。が、飛び込むようにした身体は急にとまらない。
「うわぁぁ!」
悠にタックルする型になり、二人はまとめて床へと倒れこんだ。その衝撃で悠の手から離れたゲーム機がぱっくりと口を開けて宙へ舞う。
「っと、何してんっすか先輩たち」
床にたたきつけれれるのを覚悟したが、うまい具合に完治がそれをキャッチした。が。
「見るな完治!」
もちろん開いた画面の中には、攻略中の彼の顔。
「なになに?『俺とおまえの周りだけ、時間が止まってるみたいだ』? なんじゃこりゃ」
あああああ、よりにも寄ってそんなセリフが出てる場所で止まってるなんて。
「恋愛シミュレーションゲームだな」
がっくりと項垂れたまま、床に這いつくばる陽介とは違い、起き上った悠が完治の手元を覗き込む。
「しかもこれ、攻略キャラクターが男じゃないか」
「はぁ?!」
カチカチとボタンを押す音がして、どうやら先に進めているのだろう。
「先輩、人に散々なこと言っといて、自分がそうなんじゃねーか!」
「いや、違うって! そういうわけじゃ!」
ない、はずだ。いや、いくら悠に似てるからって男口説いてる段階で、否定できないのか。
「実は……」
もう、充分恥はかいたんだ。どこまででも一緒だと思い、事の顛末を二人に話して聞かせた。
「うっかりにも程があるだろ」
「うるせぇな」
「ツメが甘いっすよね」
「てめぇに言われたくねぇよ!」
冷たい視線を浴びせられて、思わず正座をしていた自分がどんどん小さくなってる気がする。
「でも、先輩に似てるからって、普通やらねぇだろ」
「そっか? なんかここまで出来た奴だと気にならねぇ?」
「すげえとは思うけどよ」
だとすると、なんで自分はこんなにも必死にこの彼を口説いていたのか。
(なんかヤバイ考えにぶち当たりそうな気がする)
背中を流れる冷たい汗を感じながら、こっそりと悠の顔を窺う。
「陽介、おれのこと大好きだろ」
そんな気持ちを知ってか知らずか、画面から目を離さないままサラリと図星をさしてくる悠が恐ろしい。
「はい、そういうことにしておいてください、って、ええ!
深い意味を考えちゃだめだと、よく聞きもせずとにかくここは一刻も早い事の収束を願って同意することにしたのだが。
「なら良いや」
「え、良いのかよ!」
よくわからないが悠はご機嫌だ。そして、そっとゲーム機を閉じ、再び陽介の手へと返してよこす。
「攻略、頑張れ」
「えっと、それは……」
ゲームの彼か、それとも目の前の悠か。
ただ笑うだけの悠の表情からは判別ができず、陽介はただただ、混乱するばかりだった。