** MA / TSU / RI **


先日来、ヒロシが校内で捕まらない。
元々姫原自身もあまり頻繁に学校に通ってきているわけではないが、それでもヒロシを見つけるのは今まで然程難しくは無かったし、何より見つけた後ヒロシに言うことを聞かせることなど訳も無かった。
が、あの事件の後、何となくお互いの気持ちを通じ合い、晴れて『恋人』に昇格してからと言うもの、二人で過ごす時間は極端に少なくなったような気がする。

別に、お互いが避けているわけではない…と思う。少なくとも姫原はそんな事はない。
しかし、ヒロシのほうはどうだろう…。

「いーや、そもそもあいつが問題なんだ。くそ、気にいらねぇ!」

ガツンと大きな音を立てて廊下の壁を蹴る。先ほどすれ違ったばかりの生徒がその音の大きさに驚いて首を竦めるのも気に入らない。

あいつ―八王子進は姫原とヒロシを挟んでにらみ合う関係だ。

優等生で生徒会長、その上ヒロシの所属する天文部の部長でもある。前の二つの肩書きはどうでもいいが、一番気に入らないのは最後の肩書きだ。それを笠に着て今現在もヒロシを拘束しているのだから。

星ぐらい自分がいくらでも見せてやるのに。

一度、別荘にある天体望遠鏡を見せてやるのもいいと思う。あそこなら明かりも少なくて星もよく見えるし、何より絶対に八王子の邪魔は入らないだろう。

「そう、邪魔なんだよ、ったく!」

もう二週間近くろくろく話も出来ない状態に、姫原のイライラはピークに達していた。






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