* BACK *

** 戦いの後で… **


一刀両断エルディカイザー!

あの日…。俺たちの戦いは終わった。ガスは修行を続けると言い、大地は地球に戻ると言った。
俺は…。

「ラビ、早くしろよ、何ボーっとしてんだ!」

大地が叫んだ。

「うるっせェな、わかってらァ」

俺たちは今、月面にいる。
大地は月旅行を続けていた。
どうやら俺たちがラビルーナに行ってから、あまり時間は経ってないようで、大地の月旅行の日程もまだ残っていた。
俺は、大地の月見物に付き合っている…と言うより、ガイドをしているって言う方が正しいかもしれない。

「ラビ?」

大地が不思議そうな顔をして覗き込んだ。
俺はハッと我にかえり、

「何やってんだ、おいてっちまうぞ!」

そう言って走り出す。

「あっ、待てよラビ!」

大地がジェットボードで追いかけてきた。

――― 平和になったよ、ジィちゃん…。

◆◇◆

「ラビ…。あたし達はここに残るけど、あんたはどうすんだい?」

戦いの終わった日、バァさんは俺にそう聞いた。
俺は耳長族だ。月面で暮らす必要はない。まして月面に住むとなれば、耳を隠さなければならない。それだけは絶対に嫌だ!
でも…………。

「俺は月面に行くぜ」

◆◇◆

『…昨日…姫のかんざし岩…なくなると言う事件…』

雑踏の合間にニュースが聞こえる。
そういやァ、かんざし岩、大地が壊しちまったもんな。

「ニンジン博士、元気かなーっ」

大地がポツッと言ったそれに、俺はニッと笑って答えた。

「あのジィさんが死ぬわけねェだろ」
「それもそうだな」

『地球行き…号の搭乗手続き…ご乗船の方は…』

空港のアナウンスが入る。

「大地っ、やぁーっと愛しいお袋さんに逢えるな。このマザコンボーヤ」
「なんだとっ!」

大地が怒って拳を上げた。

「ケッ、んだけ元気がありゃあ充分だな。じゃな、お袋さんによろしくな」

大地が振り上げた手を力なく下ろす。今までの表情から一転、暗い陰を落とした。

「ああ、ラビも元気でな」
「これだからマザコンは困るよなっ」

俺はわざと憎まれ口をきき、大地の額をこづく。
そんな俺に、大地はニコッと笑いかけた。

「ラビ、お前、変わるなよな。俺も変わらないからさ」
「お前はちったぁ変わったほうがいーんじゃねェか、え、マザコン」
「はははっ。じゃな、また来るよ」
「ああ、いつでも来いよ。嫌だけど相手してやらァ」
「それじゃ」

大地がジェットボードの入ったリュックを背中に背負って、ゲートに向かって行く。しばらくすると、振り返って、俺に大きく手を振った。

大地の乗った船は、地球に向かって飛んでいく…。懐かしい、大地の家へと…。

ラビルーナ。俺と同じ耳長族だけが住む、魔法の国。俺の生まれ故郷。
確かにとても懐かしくて…。
でも俺は、月面に戻った。耳を隠して。

「さてと、俺も家へ帰るとするか」

◆◇◆

草原の中にポツリと古ぼけた家が一軒建っている。
俺は近付いて戸口に立ち、一呼吸おいてゆっくりと扉を開けた。

「ただいま」
「おかえり…ラビ…」

ハッとして目をこする。もう一度見ると…。

「誰も…いねぇよな…。当たり前か」

埃のかぶった床を歩き、奥の窓を開けると、風が入ってきて埃が舞い上がり、むせた。
オセロとドミノに会って、海賊になってどれくらいになるだろう。一度も帰ってこなかった…。
家の裏には一面の彼岸花。
俺は外に出て、抱え切れないほどそれを摘み、歩き出した。

◆◇◆

「えーん、えーん、ジィちゃん怖いよぉ」
「はははっ。何じゃラビ、情けないのぉ。雷くらいなんじゃ」

その頃の俺は酷く泣き虫で、雷の鳴る夜なんか、よく、ジィちゃんに泣き付いたもんだった。そして、俺が泣き付いてくると決まって、ジィちゃんがこんな話を聞かせてくれた。

「これは、わしが、わしの爺さんから聞いた話じゃ。遥か遠い昔、月の中にラビルーナと言う所があったそうじゃ。そこにはラビ、お前と同じ長い耳のついた人たちが住んでおった。じゃが、ある日、どこからともなく現れた魔の使いによって危うくラビルーナは滅ぼされかけたのじゃ。その時じゃ。普段はケンカすらしない穏やかなラビルーナの人々が、魔の使いに立ち向かい、ついにはそいつを封じ込めたのじゃ。いいかラビ。お前は勇敢なラビルーナの人間、月うさぎじゃ。その耳が何よりの証拠。じゃから泣いてはいかん。お前は強いんじゃ」
「ねぇ、ラビルーナってどんなとこ?」

 俺は涙を拭きながら、ジィちゃんにそう聞いた。

「ん? とても平和な所じゃよ。嫌なことなど何一つない、青い空に地球が浮かぶ緑の国じゃ。ラビ、お前の生まれ故郷じゃ。お前の名は、そのラビルーナから取ったんじゃよ」

◆◇◆

ジィちゃん、確かにラビルーナは俺の生まれ故郷だったよ。
青い空と緑に溢れた素晴らしい国。
ジィちゃんにも見せたかったな。

◆◇◆

「ジィちゃん、夕飯のおかず買ってきたよ。今日はニンジンスープにしようよ、ジィちゃん好きだろ。今作るから。……ジィちゃん?」

窓が開いていて、風が入ってきた。
窓の外には地球……。

「ジィちゃん………。ジィちゃん!」

地球はとても静かに、俺たちを見つめていた……。

◆◇◆

家を出て、しばらく行くと丘の上に一本の木が見えてきた。その根元には……。

「ジィちゃん……」

十字架も、もうかなり古い。草も生えちまったな。随分来てなかったもんな…。
俺は抱えてきた花を捧げた。懐かしいジィちゃんの墓に。

「ジィちゃん、俺、強くなったよ。もう泣いたりしない。大丈夫、心配しないで。もうここを離れない。ずっとジィちゃんの傍にいるよ」


――― ラビ…お前は月うさぎじゃ…
――― 幸せを呼ぶ…月うさぎじゃ…



END

んっっっっ年前に書いた2次創作です。
オリジナルは『魔動王グランゾート』と言うアニメでした。
まだ最終回を迎える前に書いたものなので
最終回を見た後にこれを読むと…辻褄合いません (爆)
その上、かなり昔に書いたものですから、ヘタレ度MAX!

心優しき方が読んでみたいと仰ってくれたので
舞い上がって掲載です…スルー推奨。
って…ここに書いてもねえ? (笑)

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